…誕生日!?
今日はの、誕生日っっっ!!
今日はそんな大事な日だったのかーっ!!
たまたま女王の部屋の前を通り過ぎる時に、可愛い可愛い彼女の声が聞こえた。
その声をもっと良く聞こうと扉に耳をつけた瞬間、聞こえた単語に声をあげそうになり、すぐさま大好きだったばーちゃんの映像に切り替え、部屋を離れる。
誕生日…
それは、年に一度のお祝いの日
それが好きな相手だったりした日には、一大イベントだ
とはいえ、自分は喋れない上、金もない。
いや、地道に貯めてるへそくりがないとも言わないが、買物に行く時間もなければ、自由な時間もない。
ここを離れた瞬間、あの冷酷な声が頭上から降り注ぎ、俺の血の流れごと動きを止められる。
思い出しただけで背筋が凍り、ぶるるっと身体が震える。
だがしかし!
そんなことで、彼女への気持ちが揺らぐことがあるか!?
いーや、ないっ!!
あるはずだ…俺にも、俺にも出来ることがっ!!!
「あ、ジャックさん、こんにちは」
やっぱ、今日も可愛いなー♪
こんにちは〜…
…という気持ちをこめて、頭を下げる。
ぺこり…
慣れた彼女は、バッグからいつものように手帳とペンを俺に差し出してくれたので俺もいつものようにそれを受け取り、暫しの甘いひと時を過ごす。
ちなみに、文字数の関係上、俺の心の声は『 』で表現されてる…決して、喋ってるわけじゃないので、注意して欲しい。
「今日のお茶もすーごい美味しかったんだ」
『へ〜どんなお茶?』
「えっと、特別なお茶?」
『特別?』
女王はと飲むためのお茶は、いつも特別なものを用意している。
…というか、用意させているってのが正しいな。
大抵苦労して取り寄せるのは下っ端である俺を筆頭に召使達だ。
まぁ召使達は苦労した分、別のことで喜ばせてもらったりしてるみたいだーけーど…って、こりゃなんかただの僻みだな。
っつーか、俺は喜ばせて貰ったことなんて一度もないっつーの!
ぬか喜びなら、数えられないぐらいあるけど…って、あ、…なんか俺…泣けそう。
いやいやいや!
彼女の前で泣いてどうするよ!俺っ!
今は笑顔だよ、笑顔!スマ〜イル!!
溢れる涙を心で拭った瞬間、彼女が嬉しそうに微笑んだ。
「いつもより香りが良くて、甘くて美味しかったの」
『………そ、そうか〜』
微笑んでるの方が、蜂蜜みたいに甘くて俺が蕩けそうですっ!!!
…なんてことは、言えないので、当たり障りのない答えを手帳に書いておく。
「…」が普段より多いのは、葛藤の現れだと思って欲しい。
そうこうしているうちに、城の門まで来てしまった。
俺は女王の許可なしに、ここから出ることは出来ない。
「あ、もう出口…送ってくれてありがとう、ジャックさん」
ぶんぶんぶんっ
音を立てて首と手を振ると、鈴が転がるような笑い声が聞こえた。
あ〜も…ほんっと、可愛いよなぁ〜…って、和んでる場合かー!俺っ!
今しかないだろ、渡すチャンスっ!!
手帳とペンをバッグへいれている間に、俺は予め懐に用意していた物を彼女の方へ差し出した。
「えっと…これは、カード?」
こくこく
「帽子屋さんかアリスにお届け物?」
ぶんぶんぶん
「女王様からの、お手紙」
ぶぶぶぶぶんっ
違う違う!
に関して何かある場合、女王は直接渡したりしてるでしょっ!
それになんだって俺が、野郎相手にカード書いたりするのさ!
「それじゃあ…もしかして、あたし…に?」
○ぴんぽーん
「あ、正解」
…この、○×ボタンだけは、持ってて良かったって思える七つ道具のひとつだな。
カードを受取る相手がしっかり判明したところで、ひとつ咳払いをしてから、へカードを差し出す。
「ありがとう…開けてもいい?」
こくこく
慌てて書いたけど、想いはそこに全部込めた。
少しでも、この俺の気持ちが伝われば…いい。
任務を終えて女王の所へ戻るのとは別の緊張感に包まれながら、カードを読んでいる彼女の方をチラリと見る。
そこにあったのは、今まで見たことがないように嬉しそうに微笑む彼女の姿。
読み終えたカードをたたみ直すと、ぎゅっと胸に抱きしめるという仕草まで見せてくれた。
「お祝いのカード、ありがとうジャックさん。大切にするね」
時間があれば、もっといい台詞や、プレゼントも用意できた。
でも、誕生日ってのは気持ちが一番大切だろうって思ったんだ。
今の俺に言えるのは、それだけだったから。
誕生日おめでとう、。
君が、いつも笑顔でありますように
幸せがいっぱい、訪れますように
今年の誕生日で、初めてAre you Alice?のキャラのほぼ全員を使って書いた
一応、連続する話……です。
UPするために、コメントとタイトルを考え直しました。
眠れない夜にはいつもいつもいつもお世話になっているジャックさん。
不憫というか、可哀想というか…そういう単語は全て彼のためにあるようなもんです。
何か言っても言わなくても、三月同様アリスにしょっちゅうぼこられています。
根が真面目な人なので、喋るなと言われればちゃんと喋れないいい子です。
ただ、その分、脳内で喋る台詞が多いので、小話にすると偉い長い話になります(苦笑)
でもって毎度表現に困ります…ぶんぶんぶん、はYES、ぶんぶんぶん、はNO…となっております。
わかりにくくてすみません(苦笑)